従来の劇場管理業務は、各専門分野の「舞台(大道具)」「照明」「音響」の技術者で構成されていました。しかし、各地に次々と建設される公共ホールは、施設も大型化・複雑化し、コンピュータ制御が当たり前の舞台機構を備え、最新のテクノロジーが導入されています。設立目的も「場の提供・鑑賞型」から「情報発信型」へ、また「住民参加」がキーワードとして多く登場してきています。いままでの舞台技術の他に、舞台機構の仕組みを熟知し、コンピュータによる制御法、重量物の扱い方などをも取得した、「劇場管理技術」という別の職種が必要であるとの認識をもちました。
この劇場管理運営技術者の業務は、利用者との調整・立会・設備の運用、管理メンテナンス、改修計画作成等の業務にとどまらず、不特定多数が集まる場所という性格上守らなければいけない法律問題や、出演者・観客を含めた安全確保の問題を技術的にも解決し、利用者が求める最大限の表現をどのように可能にするか適切なアドバイスをし、要望に答えていくという内容です。
専門の技術力の提供のみならず、「法令」に基づいた「安全」の確保や、「法令」に基づいた禁止行為の解除申請による「表現行為の保障」などが求められるとともに、住民サービスといったことまでも含めた広範囲なコミュニケーション能力・調整力が必要とされます。
愛舞協では労働基準法、消防法、労働安全法、労働安全衛生規則など関係法令の勉強や、必要とする資格取得を積極的に行っています。舞台担当者には、「玉掛技術者」「足場等作業主任者」などの資格を、また照明担当者は、(社)日本照明家協会が行っている「舞台テレビジョン・照明技術者技能認定制度」の認定取得、音響担当者は、国家試験(厚生労働省認可)である「舞台機構調整技能士(音響機構調整作業)」の取得なども積極的に行い、専門分野の技術力の向上はもとより、他分野の舞台技術をも学び、その他「防火管理者甲種」「職長・安全衛生責任者」も取得させ、劇場管理運営技術の向上をはかっています。
現在、公共ホールでは、劇場管理運営技術や舞台技術の専門知識を持たない他業種の業者や、アマチュアのボランティアが劇場管理運営業務に携わったりしている例が各所で見受けられます。さらに指定管理者制度の導入により、その傾向に拍車がかかっています。
このような現状では、舞台の安全確保、安全運営が出来ません。舞台技術における専門性、人材の確保、人材の育成などとうてい望めるものではありません。ましてや質の高い表現技術を提供することは不可能です。
2002年12月10日に閣議決定された『文化芸術振興に関する基本的な方針』の中に、
1.「舞台技術者の専門性の向上を図るための資格のあり方について検討を進める」
2.「舞台技術者、技能者など文化芸術活動に携わる幅広い人材の養成及び確保を図るため、資質向上のため の研修の充実を図る」
3.「劇場、音楽堂等における活動に不可欠な舞台技術者・技能者等の資質向上のための研修の充実を図る」
などが盛り込まれました。
また、2003年9月に施行された改正自治法による「指定管理者制度」の発足に伴い、いままで以上にアマチュアによるボランティア組織や、舞台技術・劇場管理運営技術と無縁であった多くの業者が参入を試みようとしています。このままでは、技術力により裏打ちされた「安全」の確保や、質の高い芸術の提供・創造などとても望むことは出来ません。
愛舞協では公共ホールを管理運営する技術者に、技術面での品質保証としての「資格」が必要との認識をもち、公共ホールの所有者である行政の方へ専門技術者による劇場管理運営の必要性を訴え、『劇場管理運営技術者技能認定試験』を2002年度より実施しています。
初年度の検定試験では、2級合格者164名、3級合格者54名に認定を与えました。2003年度からは1級の認定試験を実施しています。この制度のためのテキストとして、「劇場管理運営業務」「劇場設備と作業の実践」「電気」「劇場関係参考法令集」「舞台用語集」の5冊を作成しています。
理念に基づいた人材育成の技術研修は、
『ベーシックセミナー』
『劇場管理運営業務講習会』
『愛知県舞台技術者セミナー』 等があります。
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